約 1,207,352 件
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1070.html
【10月21日】 『将来の自分のために、今できること』 シフォン「キュア~! シフォン、お留守番つまんなぁ~い」 せつな 「今日は我慢してね、シフォン。進路相談なの、遊びに行くわけじゃないのよ」 シフォン「キュア~? しんろそうだん、てなぁに?」 せつな 「どこの高校に進学して、将来に何を目指すのか、ってことをお話するの」 ラブ 「シフォンはやりたいことってある? まだ早いかな?」 シフォン「シフォン、しんろそうだん一緒にいく~」 ラブ 「しょうがないか~。お話してる間は、あたしのカバンの中で大人しくしてるんだよ」 【10月22日】 『カボチャが美味しいワケ』 ラブ 「今日はカボチャのスープを作ってみたの! 甘くっておいしい~!」 せつな「カボチャの天ぷらもコロッケも美味しいわ。なんだか不思議ね」 ラブ 「なにが不思議なの?」 せつな「野菜は、食べられないように苦くなったのでしょ。カボチャも野菜なのに、苦くないもの」 あゆみ「カボチャはウリ科の果実なの。緑黄色野菜だけど、実はメロンやスイカの親戚なのよ」 圭太郎「固くて食べられにくいしな。他にも根野菜は狙われにくい分、苦味やエグミの少ないものが多いんだ」 せつな「ニンジンも根野菜だから、甘くて美味しいのね」 ラブ 「抜き足~、差し足~、忍び足~」 せつな「らぁーぶ、どこに逃げる気?」 【10月23日】 『芸術は○○です!』 せつな「今日は美術館に絵を見に行くの。芸術の秋だものね!」 あゆみ「感想はどうかしら? せっちゃん」 せつな「あっ、えっと、素敵だと思います」 ラブ (せつな、わかるの?) せつな(ダメ、何を描いてるのかすらわからないわ) あゆみ「クスクス。聞こえてるわよ、ラブ、せっちゃん」 ラブ 「あっちゃ~」 せつな「ごめんなさい。せっかく連れて来てもらったのに……」 あゆみ「いいのよ。正直言うと、わたしだってよくわからないもの」 せつな「でも、絵を描くってことが、とても自由なんだってことはわかったわ!」 ラブ 「そして、そういう絵がちゃんと評価されるってこともね!」 【10月24日】 『タルト・フ・フォンボルグ・ニコポンス以下略』 タルト「今日はクイズや~! スゥイーツ王国にいるワイの婚約者の名前は誰やと思う? 答えは明日!」 ラブ 「タルトだから~、トリュフとか?」 タルト「いや、それじゃ尻取りやがな……」 せつな「はぁ~、自分の名前も覚えてないのに、婚約者の名前を人に聞くなんて……」 タルト「いや、ちゃんと覚えとるで。ただ、途中で舌を噛んで、最後まで言えたことがないだけなんや」 美希 「もう、どこから突っ込んでいいのかわからないわね……」 祈里 「今日はクイズにもなりませんでした……。答えは明日!」 【10月25日】 『遊んでるんとちゃうで、見聞を広めとるんや!』 タルト「ワイの婚約者の名前は、“アズキーナ”言うねんで。可愛い名前やろ~」 ラブ 「名前だけじゃなくて、本当に可愛い子なんだよ~」 せつな「婚約者を持つって、どんな気持ちなのかしら?」 タルト「せやな~。安堵感があって、嬉しくもあって、恥ずかしくもあってな」 祈里 「寂しくない未来が、ちゃんと約束されてるのね」 タルト「せやけど、もう少し自由が欲しいなあ」 美希 「タルトがこれ以上自由になってどうするのよ……」 【10月26日】 『目が覚めるまでの運勢』 美希 「うふふ、今日の貴方の運勢、きっと完璧よ!」 祈里 「美希ちゃん。その言葉の使い方は、ちっとも完璧じゃないと思うの」 せつな「こういうのを、なんとかの一つ覚えっていうのよね?」 美希 「ぐっ、なにもそこまで言わなくたって!」 ラブ 「大丈夫! 美希たんはお笑いネタを振ったんだよね?」 美希 「振ってないわよ! あれね、あなたたち、どこかに羽が刺さってるでしょ!?」 祈里 「それって本音って意味だから、あんまり救いにならないと思う……」 美希 「ジィリリリリン! はあ、はあ、はあ、夢でよかった……。今朝の運勢は見るまでもないわね……」 【10月27日】 『続、天使と呼ばれた男』 カオルちゃん「秋祭りが始まるな。よし、ドーナツで稼いじゃうよ!」 ラブ 「でも、カオルちゃんってすぐにサービスしちゃうから、あんまり稼げてないんじゃない?」 タルト「それだけやないで、品切れでがっかりする顔が見たくないとかいうてな、ごっつう作りすぎるんや」 せつな「それで、余りそうになってはバラまいちゃうわけね」 祈里 「もう、サービスするためのお金を稼いでるとしか……」 カオルちゃん「いいのいいの。おじさんが稼ぎたいのは、子供たちの笑顔なんだからね。グハッ!」 【10月28日】 『動機』 タルト「最近、食べ過ぎで体が重いわ……。わいもダンスやろうかな?」 ミユキ「えっ、タルト君もやりたいの? わかったわ、後で別メニューを作るわね」 ラブ 「タ~ル~ト~、ミユキさんのダンスをダイエットなんかに使うつもり~?」 祈里 「タルトちゃん、ミユキさんは忙しい人なのよ……」 せつな「やるなら真剣にやって! ダンスに失礼よ。美希も何か言ってあげて」 美希 (あはは……。アタシもダイエットのために始めたなんて言えない……) 【10月29日】 『三位一体』 ミユキ「ラブちゃんたち、最近ダンスの息がピッタリなの。仲の良い証拠ね!」 ラブ 「ミユキさんも、ナナさんとレイカさんと、すっごく仲がいいんですよね!」 ミユキ「もちろんよ。でなきゃ合わせられないもの」 美希 「プロっていうと、普通、仲が悪くても仕事の時は合わせるってイメージだけど」 祈里 「そんな風に、割り切らないところが素敵だと思う」 せつな「ミユキさんは、お仕事よりも、あくまでダンス仲間として大切にしてきたのね」 ミユキ「タイミングを合わせるだけなら誰とでも出来るけどね。人を感動させるのは、心のこもった動作なのよ」 【10月30日】 『変化球?』 ラブ 「今日はみんなでボーリング! ストライクいっぱい出しちゃうぞ~!」 ラブ 「ゴロゴロゴロ――――ゴトン!」 美希 「ざ~んねん、いっぱい出せたのはガーターみたいね」 ラブ 「うぅ~、美希たんはストライクばっかり」 美希 「まあね。それも、せつなには敵わないけど……」 ラブ 「頂上対決だね、凄いよ!」 祈里 「ゴロンゴロン――――ピタッ!」 せつな「どうやったら、ボーリングの球が途中で止まるのかしら……」 美希 「最下位争いも白熱してるわね……」 【10月31日】 『魔法の解けたシンデレラ』 美希 「ハロウィンパーティで仮装するのよ」 ラブ 「美希たん、気合入ってる~」 祈里 「はいっ! 美希ちゃん、トナカイの着ぐるみよ」 美希 「そのネタはもういいわよ……」 せつな「それで、結局、何になるの?」 美希 「実はまだ決まってないのよね」 ラブ 「あたしが昨年見たのだと、ドラキュラとかゾンビとか?」 美希 「お化けはお断りよ!」 祈里 「シンデレラなんてどうかな?」 美希 「カボチャの馬車から降り立つ姫ね。なかなかいいわね」 せつな「でも、ドレスを着ただけでシンデレラの仮装になるのかしら?」 ラブ 「じゃあ、魔法が解けた貧しいシンデレラにしようよ!」 せつな「私、おかあさんにボロ切れもらってくるわ!」 祈里 「縫い合わせはわたしにまかせて!」 美希 「アタシ完璧、なパーティにはなりそうにないわね……」 新-540へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1689.html
かおすの140文字SS【30】 1.トロプリ小咄 考え過ぎじゃない?/かおす 「ねー前から聞こうと思ってたんだけどー、ヤラネーダって何をやらないの?」 「お化粧?」 「お金じゃないかな」 「仕事でしょ」 「勉強かなー。あ、チョンギーレ」 「あ?俺が知るかよ」 「教えてやらねーだ」 「ちげーよ」 「まさか《今》」 「今ヤラネーダ..まさに後回しね」 「そーだったのか」 2.はぐっと小咄 シャウトするのはまだ早いです/かおす 「えみる、来年の春映画がなくなるそうです」 「聞いたのです!」 「秋映画は再来年、20周年アニバーサリーの前夜祭でしょうか?」 「それでは来年のプリキュアがおろそかになるのです」 「案外、来年は全チームの続編が..」 「毎週ですか?」 「それもアリかと」 「ぎゅいーんとソウルが...」 3.はぐっと小咄 ハロウィン/かおす 「ハロウィンなのです! るーるー!トリックオアトリート!」 「とりーとおあとりーと」 「はい?」 「トリートorトリート」 「それ、どっかおかしくないですか?」 「全部おかしです」 「いとをかしですね」 「あはれと言って下さい(笑)」 4.トロプリ小咄 70人越えのアニバーサリー/かおす 「今プリキュアって70人くらいいるでしょー?」 「まなつ、一度に全員映画に出るのは無理。たぶん」 「だったら1年かけて全員紹介すればいいじゃない」 「それでも1話に2人は紹介しないと」 「毎回10本立てなら楽勝よ」 「映画プリキュア初の前後編かなー」 「いーねー!」 「鬼が笑ってる」 5.5で小咄 みんなで悩もうアニバーサリー/かおす 「こまち、何悩んでいるの?」 「かれん…実は主人公が70人いるお話を考えてるんだけど…」 「70人~? 登場人物がじゃなくてー?」 「登場人物全体となると…サブの妖精達だけでも…」 「そりゃむちゃですよー」 「他に脇役もいるんですよねー」 「2時間あっても変身だけで終わっちゃうわね」 6.ハトプリ小咄 無理があるんじゃないんでしょうか/かおす 「うっきゃー、間に合うかなー 普段着とー、パーティーシーンとー」 「えりか、一体何を…」 「いやね、再来年に迫ったアニバーサリーに向けて、みんなの衣装をさー」 「今からですか?」 「だって来年にはもう制作に入るんだからー」 「そうだね、衣装合わせに振り付けに…」 「70人で踊るの?」 7.スマプリ小咄 20thアニバーサリーロボ/かおす 「70人いれば、頭に10人、胴体に20人、手足にそれぞれ10人ずつ、超巨大合体ロボが作れます!」 「やよいー、1体にしなくっていーんじゃない」 「またロボット...」 「じゃあ、チームそれぞれが所有するとして、マックスハートロボからー」 「作画が死にます」 「熱血勝負だー」 「あかんて」 8.スイプリ小咄 20thアニバーサリーミュージック/かおす 「さー、久しぶりに晴れの舞台だー!」 「響、みんなで練習?」 「音楽チームでラストの演奏! コレをやんなきゃ女がすたる!」 「あたしは三味線でもいいかな」 「エレン、まじー?」 「バイオリンのチームもいるし」 「あ、ドラムがいない」 「じゃあ来年は太鼓のプリキュア!」 「それはないって」 9.フレプリ小咄 20thアニバーサリーダンス/かおす 「さてとー、今度はどんなダンスかなー」 「楽しみねラブ。でも、70人となると」 「スリラーね」 「せつなさん、それありかなー」 「さもなくば盆踊りかしら」 「美希たん、それは…うーんアリのよーな」 「スリラーだと、ざっざっざで演台から落ちるわね」 「スリラーなの?」 10.トロプリ小咄 らすぼす/かおす 「うおおー なぜだー まさかー これがよくあるラスボスの最後。でも後回しの魔女の場合、この局面で 明日にするわ おそらく永遠におわらない」 「そうかなー、今できることをすれば..」 「時間軸が違う。堂々巡り」 「だからくるるんなんだ~」 「違うわよ」 「もう明日にしよう」 「なぜだー!」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/145.html
…どうして、彼女なんだろう……。 始めは気が付かなかった。いつも視線の先に彼女がいる。 ふと気が付くと彼女の事ばかり考えている。 どうすれば喜んでもらえるか。どうすればもっと笑顔が見られるか。 どうすれば、もっとわたしを見てもらえるのか……。 ずっと、そんな事ばかり考えている自分が少し不思議だった。 だから必死に理由を考えた。 彼女はこちらの世界を何も知らない。すべてを失い独りきりになってしまった彼女。 仲間なんだから、友達なんだから、心配するのは当たり前。 彼女にはわたし達仲間しかいないんだから。もっともっと仲良くならきゃ。 心配して当然よね? それはとっても納得の行く理由でわたしをホッとさせる。 何もおかしくないよね?気になって当たり前よね?そうに決まってる。 でも、気付いてしまった。 わたしが彼女を見つめている、それを刺すような視線で 射抜かれている事に。 その瞬間、すべてが分かった。 わたしは初めて人を好きになった。 人を好きになるって不思議。自分が恋してる筈なのに、自分で相手を選べないなんて。 気付く筈がない。相手が同い年の女の子だなんて。 気が付かないから、気持ちが止められない。 だから、自覚した時にはもう手遅れ。 恋の神様はとんでもなく意地悪。 突然、初恋に落としておきながら、その相手は絶対に手に入らない人だなんて。 だって見れば分かる。彼女の眼にはたった一人しか映ってない。 彼女は、せつなちゃんは、ラブちゃんしか見ていない。 恋の神様はとんでもなく残酷。 初恋は実らないって言うから、文句を言うのはお門違いかも知れない。 でも自覚した途端に失恋決定なんて、ちょっとあんまりだと思うの。 そして次に感じたのが、ラブちゃんに対する信じられないくらいの苛立ち。 どうして、そんな目でわたしを見るの?もしかして分かってないの? せつなちゃんはとっくにラブちゃんのものじゃない。 あんなに近くでせつなちゃん見てる癖に!信じられない! 無性に腹が立った。今までラブちゃんに、いいえ、誰に対してでもこんな 苛立ちを覚えた事なんてなかった。 わたしがどんな欲しくても手に入らないモノをとっくに手に入れてる癖に、 その事に気付きもせず、こちらに嫉妬を向けてくる。 ラブちゃんにこんな面があったなんて。ついでにわたしにも。 ほんの少し、意地悪したくなったの。 ラブちゃんの視線に気付かない振りをする。 わざとせつなちゃんの体に触れ、二人で出掛ける約束を取り付ける。 ラブちゃんには解らない様な本の話をする。 こちらの事を勉強したいって言うせつなちゃんに、色々本を薦めたのはわたし。 元々すごく頭が良いんだろうな。砂が水を吸い込むようにって こう言う事なんだと思った。 せつなちゃんは勉強熱心で、好奇心旺盛で、今ではわたしの方が 教えて貰う事もあるくらい。 せつなちゃんは馴れ馴れしいくらい親しげなわたしの態度にも、 嬉しそうに可愛い笑顔を向けてくれる。 ふざけて抱き付いたりしても、「なあに、ブッキー?」なんて警戒心の欠片もない。 わたしはその夜、せつなちゃんの甘い香りと感触に一晩中眠れなかったくらいなのに。 せつなちゃんの笑顔に触れる度、どんどん心が削られて行く。 見る度に幸せになれた筈の笑顔が、どんどん苦い痛みを打ち込んでくる。 だって、それは友達だから見せる笑顔。それ以上でも、それ以下でもない。 でも、もし彼女がわたしの気持ちを、いいえ、わたしの中に渦巻く欲望を知れば…… それすらも得られなくなる。 このままじゃ何もかも失ってしまう。大好きな人も、親友も、自分の心さえも。 恋心を隠して友達として側にいる。それが一番だと思ってた。 手に入らない。諦められない。でも失いたくない。 こんなに苦しいなんて知らなかったから。 そしてせつなちゃんを想うのと同じくらい、ラブちゃんの気持ちが痛い。 だって分かるから。ラブちゃんがどんな気持ちでいるか。 いつも元気いっぱいで天真爛漫なラブちゃん。引っ込み思案なわたしには ラブちゃんは憧れだった。 太陽の様な笑顔はいつも眩しくて、どんな時でも周りを明るく照らしてくれる。 ラブちゃんが大丈夫って言えば、どんな事でも大丈夫。 ラブちゃんが頑張ろうって言えば、辛くても踏ん張れる。 ラブちゃんはいつも自分の事は後回し。人の為に笑って泣いて。 周りの人の笑顔が自分の幸せ。 そのラブちゃんが、初めて身勝手なまでの独占欲を見せて執着している。 『あたしのなんだから!』『誰にも渡さないから!』 その瞳が、そう叫んでる。 物心つく前から一緒にいたんだから、分かる。 あんなふうに、ラブちゃんが我が儘とも言える欲望を剥き出しにするなんて、 もうこの先ないんじゃないかな。 一生に一度の我が儘を、血を吐くような思いで叫んでる。 『お願いブッキー、…諦めて。』 少し前まではいくらでも涙が出た。 せつなちゃんとの何気ないやり取りが嬉しくて。 叶わない想いが辛くて。 ラブちゃんの視線が痛くて。 親友にそんな思いをさせている事が恐くて。 自分のどろどろした心が穢い物に思えて。 でも、今は何を思っても涙は出ない。 どんなに胸が締め付けられても、心が悲鳴をあげても、 出てくるのは焼け付くような溜め息ばかり。 わたしは、決めた。壊れてしまうのを恐れて自分を磨り減らすより…… 自分で、いえ、せつなちゃんに終わらせてもらおう。 せつなちゃんがラブちゃんを裏切る事は、あり得ない。 だから、告白して、叶う筈のない頼み事をして、 ……思い切り、振ってもらえばいい。 せつなちゃんは、ショック受けちゃうかな。泣いちゃうかな。 でも、いいよね?せつなちゃんにはラブちゃんがいるから。 きっとラブちゃんが慰めてくれる。 「せつなちゃんが、好きなの……友達としてじゃなく……。」 そう言った瞬間、今すぐ世界が崩壊しても構わない。本気でそう思ってしまった。 魂が抜けて行くのが見えるみたい。それくらい全身の気力を振り絞った。 言わなきゃ良かった。でも言わないと、わたしがどうにかなっちゃいそうで。 いやいや、もうとっくにどうにかなってるのかも。 でないと、できるはずがない。女の子同士で、しかも親友の恋人に告白なんて……。 せつなちゃんは新しいプリキュアの仲間。新しいクローバーのメンバー。 そして親友の、…ラブちゃんの大事な大事な人。 散々悩んで、決死の覚悟で臨んだのに、言葉が口から離れた瞬間から 後悔で身が縮み上がる。 せつなちゃんの顔が見られない。その顔にどんな表情が浮かんでいるのか、 恐くて 確認出来ない。 暫くたっても何も言わないせつなちゃんに、恐る恐る、顔を上げる。 その時彼女の顔に浮かんでいたのは、驚きでも、軽蔑でも、嫌悪でも、哀しみでもなく… わたしが怖れていた、どんな否定的な表情でもなかった。 ただただ、恐ろしいほどに真剣な、真摯な顔。こちらが怯みそうなほどに。 「それで、ブッキー。あなたはどうしたいの?」 その言葉には揶揄するような響きも、こちらへの侮蔑も感じられない。 ひたすら誠実に、相手の気持ちに向き合おうとする真っ直ぐな視線。 「私は、あなたの気持ちには応えられない。…それは、わかってるんでしょう?」 せつなちゃんの視線に射竦められる。 もっと動揺されると思ってた。驚いて、おろおろして、 もしかしたら泣いてしまうんじゃないかって。 けど、目の前にいるせつなちゃんには、そんな弱さは微塵も感じられない。 どんなものからも絶対に逃げ出さない、毅然とした姿がそこにあった。 「ラブちゃんが……好きなのよね…。」 そう言うと、せつなちゃんの眼がふっと柔らかくなった。 「分かってるの……わたしなんか入り込む隙間はないって…、でもね、でも…」 「ありがとう。」 「…!?」 「ありがとう。私を好きって言ってくれて。」 穏やかに、微笑みさえ浮かべて彼女は言う。 「ブッキーが、好きになってくれて……私は嬉しいわ。」 「……せつなちゃん…。」 多分、わたしは呆然としてたんだと思う。だってあまりにも予想外な言葉だったから。 悲しい顔で拒否される。ブッキーは大切な友達だと諭される。 このどちらかしかないと思ってた。 間違っても、『ありがとう』や『嬉しい』なんてどんな形でも言われるなんて 想像の埒外だ。 「…せつなちゃん、ワケ、分かんないよ。…わたし、振られたんだよね…?」 「そう…かしら。正直な気持ちなんだけど…。ブッキーは大切な人だから。」 「友達として…でしょ?」 「……うーん。ちょっと、ちがうかな。」 じゃあ、何なの?私の戸惑いが伝わったのか、せつなちゃんもちょっと 考え込むような顔をする。 「……水……かな……。」 「…水……?」 そう、と彼女は頷く。 水がなければ人は生きていけないでしょ? いくら太陽が照らしても水がなければどんな生き物も死んでしまう。 だから、あなたは私にとっては水なの。 そう言ってわたしを見つめるせつなちゃん。正直よくわからない。 はぐらかされてるような気もしなくはない。 でも彼女は大真面目な顔で。 その顔を見てたら何だか少し可笑しくなってきた。 まさかこの場面で笑える自分がいるとは思いもしなくて…。 「じゃあ、わたしがいないとせつなちゃんは死んじゃうの?」 「死んじゃうかも知れないわね。」 「わたしが水ならラブちゃんは太陽?」 そう聞くとせつなちゃんは嬉しそうに、にっこり笑う。 その笑顔があんまり可愛くて、ちょっぴり意地悪な質問をしてみる。 「じゃあ、太陽が無くなったら?」 水がなければ死んでしまう。それなら太陽が無くなればどうなるの? 「…あのね、世界が滅ぶの。」 相変わらず大真面目にせつなちゃんは答える。 死んでしまうのと、世界が滅ぶの、どう違うのか。 同じように思う。でも全然違う気もする。 分かるのは、せつなちゃんにとっては全然別物だって言う事。 「その時は…せつなちゃん、どうするの?」 「どうもしないわよ。世界が滅ぶんだもの。それで、おしまい。」 さらっと言ってるけど、内容はとんでもないよ。せつなちゃん。 でも、何となくわかった。せつなちゃんのすべてはラブちゃんがいることで始まってる。 だから太陽が無くなり、世界が滅んでしまえば、死すら意味がなくなる。 辛い事も悲しい事も、恐怖さえもどうでもいいこと。 でも、言ってる事はのめり込み過ぎで怖くなるくらいの筈なのに、 思わず口に出てしまった言葉は… 「……いいなぁ、ラブちゃん。」 そう思ってしまった。羨ましいって。 こんなにも誰かに想われるってどんな気持ちなんだろう? 「そう?ちょっと気持ち悪くない?入れ込み過ぎでしょ?」 「…それ、ものすごいノロケてるよ。せつなちゃん。」 ラブは大変だと思うわよ、なんて相変わらずせつなちゃんは真面目顔のままで うんうんと頷いている。 「そっかあ…」 そっか、そうなんだよね。始めから分かってたのに。 わたしが好きになったのは、ラブちゃんが大好きなせつなちゃん。 もし、ラブちゃんではなくわたしを選ぶようなら…それはわたしが好きになったせつなちゃんじゃないのかも知れない。 (でも、水だって相当大事よね。なんせ、無いと絶対に死んじゃうんだし。) 例えそれが、太陽があってこそのものだったとしても。 わたしは彼女の世界になくてはならないものなんだもの。 「私ね、欲張りになることにしたの。大事なものは一つもなくしたくない。 だから……だから、ブッキーにも側にいて欲しい。ずっと…今までみたいに。」 「…わたしが、側にいるのが辛いって言っても?」 「そう!」 「わたしが泣いても?」 「そう!」 「勝手ね。せつなちゃん。」 「何とでも言って!」 せつなちゃんは少し怒ったような顔をして……、あぁ、分かっちゃった。 ずっと泣きたいの堪えてるんだ。 わたしは俯いて肩を震わせてしまった。どうしよう、堪えられないかも… あぁっ、せつなちゃんが泣きそう!まずい! …ぷっ…クスクス! 良かった、笑えた!せつなちゃん、ほっとしてる。 「…もうっ、ブッキーったら…。」 「クスクス…っごめん、だってせつなちゃん、何だかラブちゃんに似てきたんだもの。」 せつなちゃんは小さな子供みたいにほっぺを膨らませて赤くなってる。 可愛いなぁ、もう。やっぱり大好き。 だからもう、いいや…。 「うん、いいよ。」 「……??」 「側にいてあげる。」 「……ホントに…?」 「うん、わたし達は親友。そうよね。」 「……いいの?」 「ダメって言ったら諦めるの?」 「絶対にイヤ!」 そこは即答なのね。あらら、何だかせつなちゃんふにゃふにゃになってる。 実は物凄く力入ってたんだろうな。わたしもだけど。 言っちゃおうかな。でも言ったら、またせつなちゃん困っちゃうかな。 でも、これだけは最初から決めてたんだし…。 「あのね、それでね…一つだけ、お願い聞いてくれないかな。」 最後にこれだけ。これでこの恋は絶対におしまいにするから。お願い。 ずっとずっと、してみたかった事なの。絶対にせつなちゃんでなきゃ、嫌なの。だから、お願いします。 「キス……したいな。」 言っちゃった……。 ああ、また顔上げられなくなってきた。なんでこんなにうじうじしてるんだろう。 もっと潔くなりたいのに。 「…わかったわ。」 「?!!!」 「私から、させてくれる?」 俯いたわたしの顔をせつなちゃんがそっと両手で挟む。 小さな手。細い指。 せつなちゃんの気配が近づいてくる。 わたしは目を閉じてゆっくり顔を上げる。 ふわり…と、前髪がはらわれ、額に柔らかい感触。 違う…、思わず目を開け、そう言おうとする… すぐ目の前にせつなちゃんの顔。ドキッとした。なんて綺麗なんだろう。 わたしの好きな人は、本当に本当に綺麗な人。 黙って…そう言うように、せつなちゃんは微笑んで唇に人差し指を立てる。 もう一度、額に。次に閉じた瞼に。頬に。 触れた場所からせつなちゃんがふわふわ染み込んでくる。 渇いた胸の奥から温もりが泉のように溢れ、指先まで潤していく。 そして、最後に唇の両端に口付けたのち、唇同士が重なるように押し付けられる。 更にゆっくり、角度を変えて何度も重なって…唇が離れて行く。 全身でせつなちゃんの息遣いを感じる。 思わず、ほぅ…と息が漏れる。 その時、僅かに開いたわたしの唇にもう一度強く唇が押し当てられ、 唇よりも更に柔らかく熱いものが滑り込んでくる。 それはわたしの口の中を戯れるようになぞり、ほんの一瞬、舌先を絡め取っていった。 甘美、と言うのはこういう感覚なのだろう。 痺れるように甘く、震えるくらいに切ない感触。 「さようなら、祈里。」 吐息のような彼女の声が耳朶をくすぐり、全身を包んでいた柔らかな気配が 遠ざかっていく。 (ありがとう。)そう言おうと思ってたのに。 声が出ない。体が動かない。呼吸すら忘れてしまったかのよう。 少しでも長く、彼女のすべてを刻み付けておきたくて。 いつしか、全身を満たしていた潤いが瞼から零れ、頬を濡らしている。 もう、一生泣く事なんかないんじゃないかと思ってたのに。 どれくらい経ったのだろう。 漸く息をつき、目を開けるともうそこにせつなちゃんの姿はなかった。 夢だったの…?そんな気さえするくらい体も頭もクラクラしてる。 視線の先に、トレイに乗ったままの汗をかいたグラスが二つ。 確かに彼女はここにいた。 大きく深呼吸して… 「悪く…ないと…思うのよね。」 声に出してそう呟いてみる。 初恋の終わり方としては、悪くないんじゃないかって気がするの。 好きで好きで、どうにかなってしまうんじゃないかって思うくらい 好きな人に決死の覚悟で告白して。振られて。 でも最後に大好きな人は震えるくらい甘い、恋人同士のキスをくれた。 初恋は実らないって言う。でも、そうじゃなかった。 わたしの初恋は実らなかったんじゃない。ただ終わっただけ。 だって、あの瞬間だけ、あの人は確かにわたしの恋人になってくれたんだから。 恋の神様はそんなに残酷じゃない。 こんな初恋をくれたんだから。それに…… わたしはきっとまた、誰かを好きになれる。今度は、わたしだけを見てくれる人を。 ラブちゃんとせつなちゃんみたいに、お互いでなきゃダメって人に。 わたしは大丈夫。 明日から、また笑顔になれるはず。 それに、わたしは、きっともっと素敵な恋に巡り会える。 そう、わたし信じてる。 3-126はおまけだよ。読んでみてね
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1106.html
あたしとせつなは、家族4人でのささやかなパーティの後、 せつながあたしにプレゼントしてくれた、アカルン使用券を使って、 クリスマスイブの夜、クローバータウンストリートが一望できる丘へ出かけた。 丘の上から見渡した四つ葉町は、家々にはクリスマスイルミネーションが施され、 冬の冷たいけど澄んだ夜空の下に広がった夜景は、まるで宝石箱のように、いろんな色彩の光が煌めく。 クリスマスイブである今夜は、街全体がおめかししているかのようだ。 それに、クリスマスイブという特別な時間に、いつもは外出できない夜の遅くにこうやって出かけて、 しかも、隣にせつながいる。それだけで、すごく楽しい。 冷気が肌を痛いくらいに突き刺すけど、冬の澄んだ空気が清々しく、寒いけど来て良かったと思った。 来て良かったねと、せつなに同意を求めようと、せつなの方を向くと、 何か思いつめたように、クローバータウンストリートの方を見ている。 なんだか、声をかけるのが憚れるような、そんな雰囲気に、 「月が綺麗・・・です・・よね?あははは・・・」 なんて、意味のないことを呟いてしまったけど、せつなは聞いていなかったみたいだ。 月といえば、この間、せつなに内緒で行った図書館で読んだ竹取物語を思い出す。 竹取物語は、竹取の翁に拾われたかぐや姫が美しく成長して、その噂を聞いた貴公子や帝の求婚を受けるけど、 最後は求婚を断って、結局、元いた月の世界に帰ってしまうというお話。 確か、かぐや姫が月へ帰る時、天人が持ってきた天の羽衣を着ると、翁達のことも忘れてしまうんだよね。 インフィニティになったシフォンがあたし達のことを忘れてしまうように、せつながイースに戻らないとも、限らない。 イースに戻らないとしても、せつなの意思とは関係なく、あたしの前から消えてしまわないとも。 せつなは元々、あたし達の世界の人間とは違って、異世界から来ているのだから、 ずっとあたしと一緒にいるなんて保証は、どこにもない。 今夜の月は、半月。満月の時よりは弱い光だけど、街を見守るよう優しく照らしている。 満月の夜、かぐや姫は月へ昇っていくのだけど、今夜は十五夜じゃない。その事実が嬉しい。 無言で街を眺めているせつなの方を見ると、せつなの肩が震えているのに気づいた。 今は12月の終わり。普段着にコートを羽織っただけだから、確かに寒い。 あたしは腕をそっと、せつなの肩に回した。 その時、気付いた。せつなは寒いから、震えているんじゃない。 あたしにはただ綺麗なだけの光、だけど、せつなには違った意味を持つんだって思った。 都会の何万ドルの夜景とかいうような煌びやかなものとは違って光が少ないけれど、 あの一つ一つの光の下では、あたし達プリキュアが守ってきた人々がいる。 あたし達が守った、もしかしたら消えていたかもしれない、幸せの光。 ラビリンスが、イースが、奪おうとしていた、幸せの光。 「・・・せつなも守ってきたんだよ、この街を。だからこんなに幸せが満ち溢れている・・・」 「それに・・・せつなも消えないよね・・」 何か言った?と言いたげな、せつなの顔を見て、 「ううん、なんでもない。寒くなってきたね。もう帰ろう」 「うん」 そして、あたし達は赤い光に包まれた。 アカルンがあたし達を送った先は、あたしの部屋。 暖房は消して出かけたから、寒いだろうとは覚悟していたけど、外にいるのと変わらない。 自分のコートを脱いで、エアコンのスイッチを入れようとした時、 せつながドアを開けてあたしの部屋から出て行こうとするのが見えた。 せつなが行ってしまう。 せつなは単に、自分の部屋に行ってコートを置いてきて、 あたしの部屋に戻ってくるつもりだったのかもしれない。 だけど今、行かせてはいけないと思った。 ドアに手をかけようとしたせつなの手を強引に引っ張ったので、 腕に抱えていたコートが落ちたけれどそれには構わず、抵抗しないのをいいことに、 せつなの両手を掴んで上にもってきて、ドアの前で万歳をするような形で留め置く。 海外ドラマや何かで、警官が犯人を逮捕する時に、ホールドアップってしているような感じ。 「手を動かすと、お父さんやお母さんが起きてしまうよ・・・」 あたしはずるい。 お父さんやお母さんの名前を出せば、せつなが動けない事を知っているのに、 それでも、わざわざ口にして、せつなを言葉で縛り付けるなんて。 捕まえた犯人の身体検査をするように、丹念に身体に触れていく。 あたしの手は掴んでいたせつなの手を離れ、腕から腋を通り横腹を過ぎて、下半身の方へ。 唇は身体には触れてはいないけど、せつなの肩に顎をのせているから、あたしの息は感じているはず。 くすぐったいだろうけど、せつなは金縛りに遭ったように、微動だにしない。 手が届く一番下、膝の裏側まで到達すると、今度は上の方へと。 指の先に引っ掛かったスカートの裾を捲り上げながら、露わになった肌を手のひら全体で執拗に撫で上げて、 手だけじゃなく、唇を目の前にある首筋に這わせる。時折、触れるだけでなく、吸ったり舐めたりして。 自分の髪質とは違うサラサラで艶があるせつなの髪は大好きだけど、今は纏わりついてくる髪を掻き分けながら。 押し殺した声が聞こえる。快感から出る喘ぎ声ではなく、苦痛の呻きのような・・・ せつなの横顔を見れば、眉間にしわを寄せて何かに堪えているかのように、苦悶の表情を浮かべている。 身体を離してせつなを見ると、スカートは肌蹴けて、下着は辛うじて太腿の所で引っ掛かっている。 セーターは背中の半ばまで捲られて、ブラはホックが外されて肩ひもだけでぶら下がっている状態。 ドアの音を立てないようにと、指が白くなるまでぎゅっと手を握りしめている。 力が入りすぎたため、自分では指が開かせることができないみたいで、 指を一本一本伸ばして、固く握られた拳を開かせると、血が滲み出てきそうな程の深い爪痕。 手のひらに残る三日月型の爪痕を見て、あたしは後悔した。 せつなが感じていなかった訳じゃないし、乱暴にした訳じゃない。 だけど、今まで不幸だったせつなを、決して傷つけてはいけないと思った。 身体はどこまでも白く、闇夜に浮かぶ月のよう。 髪は漆黒の闇に溶け込んで、唇は何もつけていないはずなのに、夜目でも鮮やかな紅。 窓から差し込む仄かな月明かりでも、睫毛の一本一本が見えるほど近い。 時間が止まったような静寂の中で、唯一時の流れを感じることができるのは、あたしやせつなの白い吐息だけ。 キスまであと30センチという所で、じっと見つめていたせいで、 恥ずかしいのかそれとも、拗ねてしまったのかどちらか分からないけど、せつなは顔を背けてしまう。 横を向いたせつなの唇の端に、そっと口付ける。触れるだけのキス。 唇が離れる直前に、舌を伸ばして口角を軽く舐める。次に続くキスを予感させるように。 できればこのままずっと見ていたかったけれど、 上腕だけで上体を支えている今の不安定な状態では辛いので、 少しずつせつなに体を預けながら、素肌と素肌が触れ合う場所を徐々に広げていく。 お互いの体温を肌で感じ、素肌の滑らかな感触を味わう。 涙が出そうになるくらい安心感があるのに、一方では、ダンスをしている時以上に、胸がどきどきする。 せつなと出逢って、初めて味わった感覚。 抱き合うというのなら、美希たんやブッキーとも、嬉しい事があった時とかに、 抱き合ったことなんて何度もある。尤も、その時は、お互い裸ではなかった訳だけど。 美希たんやブッキーだったら、こんな風には絶対に感じない、と断言できると思う。 美希たんとブッキーは大切で、大好きなあたしの友達だけど、 多分、せつなに対する好きは、美希たん達とは違う種類の、好き。 さっきの続き、唇の端から再開して、細かなキスを重ねて、真ん中に近づけていく。 ちょうど、お互いの唇がぴったり合わさる所に到達した所で舌を伸ばして、 上唇と下唇の合わせ目をなぞっていくと、隙間が少し開いて、あたしを受け入れてくれる。 あたしとせつなの吐息が混じり合い、あたし達の間からどちらの息か分からない白い靄が立ち昇る。 あたしの舌はせつなの舌と触れ合い、逃げるようなせつなの舌を追いかけ、奥へ、もっと奥へ。 舌が触れ合う度、角砂糖が熱さで溶けて甘みが増していくみたいに、甘さの密度が濃くなる。 せつなもあたしと同じように、甘く感じているのだろうか。 唇を一旦離してせつなを見ると、頬が上気していて瞳は切なげで、 なんだか、答えの一つを見つけたような気がして、嬉しくなった。 キスは継続して、手を下へ滑らせる。二つの柔らかな感触と、三つの固い感触と。 固い方の真ん中、クローバーのペンダントはあたしとせつなの間で熱くなっている。 二つの柔らかな膨らみを手のひらに収め、頂きを抓んで優しく擦る。 二つの固い方を指で弾くと、あたしの指の動きに合わせて、せつなの呼吸が乱れる。 あたしとせつなの身長はあまり変わらない。 なのに、あたしより胸は大きいよね。しかも、以前より大きくなっている気がする。 身長は関係ないのかな・・・美希たんは身長が高いけど・・・・だし、ブッキーは・・・。 胸の大きい人は運動をする時に邪魔だって聞いたことがあるし、 ダンスをする上では、小さい方がいいのかもしれないけれど。 このような状況下で美希たんやブッキーを思い出すのは、 美希たん達にも、せつなにも悪い気がして、目の前のことに集中する。 手を胸から、更に下の方へと。 せつなの太腿を持ちあげ、開いたせつなの身体の間に、あたしは身を埋める。 上体をせつなの身体に密着させ、唇をせつなの唇に寄せていく。 せつなの身体と完全に重なったところで、あたしは身体を上下に動かす。 始めはゆっくり、だんだんと速く。 動きが激しくなってくると、唇は的を外れ、せつなの唇を捉える事が難しくなるけど、 できるだけ長く、触れ合うように。 せつなの身体の震えを全身で受け止め、絶頂を迎えたせつなを全力で抱きしめた。 再び静寂の時が来て、あたしは猛烈な睡魔に襲われた。 薄れていく意識の中、せつながあたしの手を握るのを感じた。 次に気がついた時、時計を見ると、お母さん達が起きてくるには少し早い時間。 まだ、日の出前の時間なのに、外は明るい。 カーテンを開くと、家々の屋根や道路には雪が積もっている。 「ホワイトクリスマスだ」 「ホワイトクリスマス?」 「うん。雪が降ったクリスマスは、ホワイトクリスマスって言うんだ」 「そういえば、さ、昨日はあたしが行きたい所に行ったでしょ」 うんうんというように、何度もうなづくせつなに、 「せつなはどこに行きたい?今日は、せつなの行きたい所に行こう」 正直に言って、ラブのそばならどこでもいい、という答えを期待して聞いたんだけど。 「美希から聞いた可愛いアクセがある雑貨屋さんと、ブッキーに勧められた本を借りに図書館に行きたいし、 パン屋さんの新作のパン、美味しかったからまた食べたいし、駄菓子屋さんに行って、それから・・・・」 「ストップ、ストップ」 あたしが止めなきゃ、延々続きそうな勢い。 「それじゃあ、最初は、パン屋さんだね」 「パン屋さん、こんな早くにしているの?」 「せつなは知らない?朝一番の焼き立てのパンが美味しいんだよ」 ううん知らないという風に、勢いよく首を横に振るせつなに、 「それでは、今日は私が、四つ葉町をご案内いたしましょう」 映画なんかで王子様がするみたいに、足を交差して右手を上から斜め下に振りおろして、 そのまま深々とお辞儀をすると、せつなの顔に笑みがこぼれた。 せつなの笑顔が見れて、本当に良かった。 「じゃあ、全部廻るには早く行かなきゃ。さあ早く着替えよう」 「うん」 クリスマスが初めてのせつなに、お父さんやお母さんがプレゼントを用意してくれているだろう。 お父さんやお母さんのプレゼントも、すごく嬉しい。 だけど、大好きな人の笑顔が、あたしにとって、一番嬉しいクリスマスプレゼント。 了 ~おまけ ドアの前からベッドの間に~ 覆いかぶさるように、私の背中に密着していたラブの身体が離れていく。 首筋から頬に当たっていた唇の熱さも、全身を覆っていた手の温もりも、消えていく。 ラブの身体が離れたので、体勢を整えようとするけど、 少しでも動けば、バランスを崩して倒れそうで、動けない。 倒れるのはいいけど、大きな音が出てお母さん達を起こしてしまうのは、とても怖い。 動けない私をラブが見かねて、私の身体を回転させてドアの反対側に向かせて、 握りしめている私の拳を、指一本一本丁寧に、開かせてくれる。 「せつな、ごめん」 余りにも意外なラブの言葉に、私は驚く。 「ラブが、私に謝る事なんて、あるの?」 「だって、あたし、せつなを傷つけた!」 「ラブが・・・私を・・・?」 ラブの目の前で自分から脱ぐのは恥ずかしいけれど、今夜の月の光は弱い。 腕や足に纏わりつく下着や服を脱ぎ去り、一糸まとわぬ姿になって、ラブの前に立つ。 「ラブ、見て。私の身体のどこか、傷ついている?」 死を覚悟していたキュアピーチとの決戦の時でさえ、 あなたの拳が私の身体を傷つけることはなかった。 あなたの手の温もりが私の凍てついた心を溶かしてくれた事、 そして、その事が私にとって、どんなに嬉しい事であったのかを、あなたは知らない。 「でも・・・あたし・・・」 私の手を取り手のひらを開かせる。そこにできた爪痕。 こんなの、傷じゃない。痛くなんて全然ない。 私の手に口付け、爪痕の形をラブが舌でなぞっていく。 動物が怪我をした時、傷口を舐めて癒すのだと、ブッキーから聞いたことがある。 自分の手に他人の身体が触れる機会は多い。 特にダンスをしている時なんかは、倒れた人を起こしたり自分が起こされたりして、 ラブだけじゃなく、美希達とも触れ合うことがある。 だけど、これは違う。 最初はくすぐったいだけ、でもだんだん、身体の奥が熱くなってきて。 身体を捩って私の手からラブの唇を離し、肩を叩いて、屈んでいたラブの身体を立たせる。 向い合い、目の前にあるラブの両頬を両手で押さえて、私の唇をラブの唇に重ねる。 戸惑っているからか強張っている身体を抱きしめ、ラブの首に私の腕を巻き付ける。 ラブの身体の緊張が緩んで、私を受け入れてくれたのを感じて、嬉しくなる。 キスをしたまま少しずつ移動して、ベッドの端までラブを導き、 ラブの身体を引き寄せながら、背中から倒れていくと、ラブが首に腕を回して支えてくれる。 お互いの息が顔にかかる程、もしかしたら、鼓動が聞こえそうな程、ラブに近い。 昔の私だったら、こんな近くに他人を存在させることを許しただろうか。 でも今は、もっともっとラブに近づきたい。 できれば、ラブと私が、一つになってしまいたい。そうしたら、ラブと離れることはない。 私の唇の近く、ラブの耳元に熱い吐息とともに囁く。 もっと一つに、溶けあうために。 「ねえ、ラブ・・・私一人だけ、裸なの・・・・恥ずかしい」
https://w.atwiki.jp/llss/pages/1074.html
元スレURL 【SS】穂乃果 「もし世界から、ラブライブ!が消えたら」【世奇妙】 概要 現実世界からラブライブが消え、代わりに穂乃果がやって来た? タグ ^高坂穂乃果 ^しんみり 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/896.html
ラブ「あの時はタルトに悪い事しちゃったよねー」 せつな「私、結構きつい事言ってしまったわ」 ラブ「んな事言ったらアイスの恨みでしょーやっぱ」 せつな「あれはタルトが全面的に悪いわね」 ラブ「みんな巻き込まれちゃって仕舞いにはウエスターまで出てきちゃって」 せつな「もふもふもふもふうるさかったわね」 ラブ「そー言えばなんであたしたち喉渇いてたのにアイスなんか食べようとしたんだろ」 せつな「汗だくだくって何?」 ラブ「今更!?季節はもう秋だってゆーのに」 せつな「私、駅前のアイス屋さんに行って来るわ。アカルン…」 ラブ「だーあたしもっ」 タルト「わしなんやねん…」 シフォン「あいちゅ~」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/60.html
(これでよし、と…。) 祈里は慎重にゼリーを型から外し、器に盛り付ける。 硝子の器には直径5センチ程の色とりどりの球形のゼリーが並んでいる。 いかにも女の子が喜びそうな可愛らしい見た目と裏腹に、 中身は殆んどが高アルコール度数のテキーラ。ネットで偶然レシピを見付けた。 度数の高いお酒に濃く甘い味を付けて、球形の氷を作る型に入れて、固める。 見た目の可愛らしさに騙されて口にすると…アルコールに慣れていない人は 数個でメロメロに酔い潰れて、ちょっとやそっとの刺激では目も覚めない、らしい。 一部では有名な大人のナンパアイテムだそうだ。 もうすぐせつなが家にやって来る。ひとりで。 少しくらいおかしい、と感じても生真面目なせつなの事だ。 手作りだと言えば残さず食べてくれるだろう。 (ごめんね。) 自分のしようとしてる事。とても現実とは思えない。 良心の呵責と罪悪感。でもそれ以上にゾクゾクするような興奮と高揚感。 でもこうでもしないと、あの人を手に入れる事はできない。 心は、とうに諦めた。だから、せめて体だけでも。どんな卑怯な手を使ってでも。 例えそれが、取り返しのつかないほどの傷を伴うものでも。 「お邪魔します。」 せつなちゃんは相変わらず堅苦しいくらい礼儀正しい。 玄関でお母さんに挨拶したんだから、わたしの部屋に入る時までいいのに。 「今日もラブちゃんは補習なの?」 「そうなの。小テストの結果が悪かったんですって。でもラブったら、 勉強嫌いなのにわざわざ勉強の時間増やすような事するの、どして?」 どうやら、一度で合格すれば余計な時間を使わずにすむのに、そうしないのが 不思議らしい。 皮肉ではなく本当にそう思ってるらしい表情に、少しラブちゃんに同情する。 そううまく行くもんじゃないのよ、せつなちゃん。 暫し他愛ないお喋りに興じる。しかし内心は気もそぞろだ。 「そうだ、おやつ食べない?初めて作ったヤツだから味の保証は出来ないけど。」 何気無いふうを装い、例のゼリーをせつなちゃんの前に置く。 不自然にならないように自分の前にも同じ物を。 ただし、わたしのは本当にただのゼリーだけど。 「これなあに?すごく綺麗ね。」 警戒心のない笑顔で問い掛けられ、少し胸の奥がチクっとする。 「えっとね、少しお酒の入ったゼリーなの。ちょっぴり大人の味?」 「へぇ、ブッキーは何でも器用に出来てすごいわね。」 一つ、スプーンで掬って口に運ぶ。少し、せつなちゃんは驚いた顔をする。 「んっ…、結構、お酒効いてるわね。」 そりゃあ、そうよ。殆んどテキーラなんだもん。 「ホント?ごめんなさい。苦手だったら残してね?」 「平気よ。ちょっとびっくりしただけ。すごく美味しい。」 せつなちゃんは続けて口に運ぶ。 こういう言い方をすれば、彼女は断れない。それを分かってて言うんだから、 ずるいな、わたし。 わたし達はお喋りしながらゆっくり食べる。わたしはもう食べ終わった。 せつなちゃんの器には、後一つと半分。 せつなちゃんの顔を見ると眼が熱っぽく潤み、頬が紅潮している。 会話の受け答えが緩慢になり、かみあわない。 かなり、効いてるみたいだ。 「せつなちゃん、まだ残ってるよ。」 食べさせあげる。そう言ってわたしはスプーンで残りを口に運ぶ。 「あーん、して。」 彼女は虚ろな眼で、素直に口を開く。つるり、とゼリーが滑り込む。 開いた唇から白い歯と、奥にピンクの舌がチラリと見えた。 それがなぜかすごくイヤらしく感じてイケナイものを見てしまったような気分になる。 程なく彼女はわたしのベッドにもたれるようにして、うとうとと船を漕ぎだす。 寝るなら、ちゃんと横にならなきゃ…彼女を気遣う素振りで手を貸し、 そっとベッドに横たえる。 もう、そんなわたしの声も届いていないようだ。 ベッドの感触に安心したのか、すぐに規則的な寝息が聞こえ始める。 それから五分、十分…聞こえるのは彼女の寝息と時計の音。 そして、外に聞こえてしまいそうなくらいの自分の鼓動。 肩を揺すり声をかける。 「……せつな…ちゃん…?」 軽く頬を叩いてみても全く反応しない。 眼が、自然と規則正しい寝息を立てる唇に吸い寄せられる。 (…おいしそう……) ペロリ、と唇を嘗め、ちゅっと音を立てて吸い付く。甘いゼリーの味。 鼻をアルコールの匂いが掠め、自分まで酔ったような気分になる。 制服のネクタイをほどき、シャツのボタンを外して行く。 白い肌が露になり、年に似合わぬ豊かな胸が現れる。 背中に手を回し、ブラのホックを外す。 無理に手を差し込んだせいで、せつなは身動ぎ、軽く呻いて寝返りをうつ。 その隙に半袖シャツの腕からブラの肩紐を外し、ブラを完全に脱がせる。 (綺麗……) 再びせつなを仰向けにして、ゆっくりと乳房を手のひらで包み込む。 柔らかい、それなのに力を入れると指が押し返されそうな弾力のある感触に 祈里は陶然とする。 (気持ちいい……せつなちゃんの胸。) 最初は乳房を撫で回すように、次第に力を加えゆっくりと揉みしだく。 先端が徐々に尖り、ぷつりと手のひらに当たる。 「……ん…んん…、ふぅ…」 吐息に微かに声が混じる。乳首が擦れる度、息が上がってくる。 (殆んど意識ないはずなのに…。) 明らかに感じてるらしい反応に祈里の愛撫が大胆になってくる。 可愛い桃色の乳首は摘まんで捏ねると、だんだん色づき弾けそうなくらい 張り詰めてくる。 唇で挟み、舌でくすぐり、軽く甘噛みする。 「んあ…、はぁっ…あっ…んっ…んぅ…」 祈里の舌が、指が動く度にせつなは切な気な吐息を漏らし、身を捩る。 (…本当に、眠ってるの…?) 反応の良さについ、そんな事を考えてしまう。 でも意識があったら抵抗しないはずないのに。 胸元に顔を埋めたまま、そろそろと太ももを撫で、下着に手を潜りこませる。 秘裂を指でなぞると、そこはもう、蕩けるように熱い。 中指が軽い抵抗を受けながら呑み込まれる。 待ち兼ねたように蜜が溢れ、肉が絡み付いてくる。 くちゅくちゅと卑猥な音を立てて熱く狭い肉の中を探る。 こんなにされても起きないのか…、胸元から顔を上げ、せつなの様子を窺う。 せつなはきつく眼を閉じたまま微かに眉を寄せ、下腹部の感覚に集中している… ように見える。 指を入れたまま、性器の上にある突起を摘まんでみる。 せつなの体がビクンと跳ね、中がきゅうっと締まる。 「…あっ、あっ、あっ…はっ…あんっ…ああっ」 小刻みに体が震え、ひときわ声が高くなってくる。 普段の低く、落ち着いた声とは違う、鼻に掛かった甘えた声音。 確かに同じ声のはずなのに。 ビクッと大きくせつなの体が震え、力が抜ける。 (もしかして、イッちゃった…?) 荒い息遣いで胸を喘がせているせつなに口付ける。少し迷って 軽く舌でせつなの歯を抉じ開ける。 せつなの方から舌を絡めてくる。それに応えるよう、強く祈里も舌を絡める。 ただただ、嬉しかった。自分の拙い愛撫でせつなが達し、口付けに応えてくれる。 「……ラ…ブ、んんっ…ラブぅ…」 心臓を冷たい手で鷲掴みにされた気がした。思わず体が強張る。 せつなはそんな事にも気付かない風に、祈里の背中に腕を回し 愛し気に抱き締める。 (…なんだ…、ラブちゃんと間違えてるんだ。) 道理で抵抗しないわけだ。愛しい恋人の愛撫なら、逆らう理由なんてない。 せつながうっすらと眼を開けそうになる。祈里は慌てて、手のひらで せつなの瞼を覆う。 「……せつな…可愛い。大好き…」 そう、耳元で囁く。 「いい子ね…、お休み……。」 せつなは安心したかのように、また静かな寝息をたて始める。 (これから……どうしようか……?) 祈里はせつなが目を覚ました後の反応を想像する。 自分を抱いていたのがラブではなかったと分かったら……。 信頼していたはずの親友が、自分を騙して犯したのだと知ったら。 (…このくらいで、壊れたりしないよね?せつなちゃんは強いもの。) 祈里は椅子に腰掛け、せつなを見下ろす。 わざと着衣は乱したままにしておく。 (…早く、起きないかな…。) 祈里はゆっくりと微笑みを浮かべる。これからの事を思い浮かべながら。 黒ブキ11へ続く
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/674.html
爽やかな風、春の空気の香り。 薄着の春物を軽やかに着こなす美希。 軒先に咲く梅の花を見ながら、新しい季節の到来を感じる。 最近、美希と一緒に過ごす時間がどんどん増えてきた。 誘うのはいつも美希の方。でも、せつなの表情も嬉しそうだ。 ただ、一つ問題が。 「そうね」 「………………」 「………………」 また会話が途切れてしまう。 せつなは急いで次の話題を探す。 あれこれ思案してる美希の負担を軽くするために。 ずいぶんこの世界に慣れたとは言え、せつなには色んな知識が足りない。 大抵の場合、せつなにとっての会話は、やりとりではなく知識の吸収だ。 だから、どうしても返答が短くなる。 「ごめん、せつな」 「もう、どうして美希が謝るのよ」 しょげた顔で美希が謝ってきた。 せつなも何も思いつかない、せめて一歩距離を縮めて気持ちを伝えた。 クラスの様子を思い出す。せつなはクラスの人気者だ。 憧れている者も多く、たくさんの人がせつなに話しかける。 しかし長くは続かない。間が持たず、隣のラブに話し相手を移してしまう。 ラブとブッキーは違った。 ラブと一緒に居る時は、不思議と自然に口から言葉が紡がれていく。 ブッキーとはやはり会話が続かない。しかし、彼女の側は心が安らぐ。 ときどき目を合わせる。そっと笑いかける。それだけで満たされた。 「だって、誘ったのはアタシなのに……退屈してない?」 「私は楽しいし、嬉しいわ。私こそごめんなさい」 美希とは、会話が続かない上にそれがつらかった。 気まずい空気。美希の困った顔。 その原因が自分にあると知ってからは、せつなも緊張するようになった。 でも会いたい。 それでも嬉しい。 どきどきして、わくわくする。 焦りと不安と緊張感の連続。 なのに、どうしてこんなに楽しいのか不思議だった。 「ねえ、せつな、もうじきバレンタインよね」 美希がこれだっ!とばかりの顔で話しかけてきた。 「好きな人にチョコレートを渡して告白する日ね。不思議なイベントね」 せつなも安心した顔で続ける。そのイベントはラブから聞いていた。 「どの辺が不思議なの?」 「告白するなら、その日じゃなくてもいいのにって、そう思っただけよ」 みんなでいっせいに同じ日に告白をする。 自由を良しとするこの世界において、それは不自然にも思えた。 「それはそうね。でも、普段は言い出しにくいから、 バレンタインデーに背中を押してもらうってのもいいんじゃないかしら」 「ふふ、なんだか美希、張り切ってるわね」 気がついてないのだろうか。美希は握りこぶしまで作っていた。 生き生きしてる美希の表情を見て、せつなも気持ちが弾んできた。 「そっ、そうかしら。気のせいよ」 「ならいいけど、美希が誰かに告白しちゃうんじゃないかって思ったわ」 くるっと一回転して振り返って笑いかける。 本気で思ってるわけじゃないわって意思表示。 「アタシが誰かに告白したら、嫌?」 せつなの顔を覗き込みながら話す。表情を見逃すまいとするように。 「嫌って言うか……なんだか寂しいわ。 うん、やっぱり嫌なのかもしれないわね」 美希に好きな人が出来る。美希が幸せになるのは嬉しい。 でも、もう自分とこうして過ごせる時間が取れなくなるかもしれない。 それは寂しかった。 「そ、そっか。せつなは誰かに告白したりするの?」 期待を込めた顔でせつなを見る。 意味が理解できずぽか~んとしてしまった。 美希の表情がすぐに不安そうなものに変わっていく。 「えぇ~、私は考えてないわ」 愛の告白。愛ってなんだろうと思う。 大切な人はたくさん居る。命にかえても守りたい人たち。 だけど、もし、二人きりでずっと過ごすなら。 「そっか……」 「もしかして、今度は落ち込んでる?」 せつなは、元気のなくなった美希を見て不安になる。 また良くないことを言ってしまったのかもしれない。 「えっ、ううん。そんなことないわよ。 むしろほっとしたと言うか」 「ほっとした?」 告白しないほうがいいと思ってる。 なら美希も自分と同じように、寂しいと感じてくれているのかもしれない。 「あ、やっぱりなんでもないない」 探るようなせつなの表情に気がついて、美希は笑ってごまかした。 「ほんと、今日の美希は変よ」 きっと自分も変なんだろう。意識しすぎだ。 今まで相手の気持ちがこんなに気になることはなかった。 でも、心はこんなにも弾んでいるもの。だからこれは悪いことじゃない。 そう思うことにした。 コトコトコト 湯気が立ち上る。 チョコレートの匂いが部屋中に染み渡る。 外はまだ薄暗い。まだ普通なら誰も起きていない時間。 せつなはチョコを湯煎してハートの型に流し込む。 「せつな、おはよ~」 「ラブッ、こんな時間にどうしたの?」 寝巻き姿のラブが元気よく入ってきた。 「ん~なんか良い匂いにつられて起きちゃった」 「普段は起こしても起きないくせに」 (目覚まし鳴らしても起きてくれませんのや) タルトに何度か泣きつかれたこともあった。 「たはは、せつなチョコ作ってるんだ」 「ええ、ラブは昨日の晩作ってたでしょ。私はまだだったから」 興味津々って感じで、ちょこまかちょこまかとくっついてくる。 幸せに敏感なラブは、こういった行事やイベントに凄く関心が強い。 「へ~、せつなもハートの型なんだ。えっ、これ?」 「だめよっ、見ないで!」 慌てて体で隠した。特に一人一人に書いたメッセージは読まれたくなかった。 英文で書いたから、ラブにはすぐに解らないかも、と思うのは酷いだろうか。 「え~、いいじゃん」 「だめよ、渡す楽しみなくなっちゃうじゃない。 朝ごはんも私が作っておくから、ラブはもう少し寝ててね」 朝ごはんのメニューを頭の中で選んでいく。 今朝くらいは用意してもてなしたかった。 「は~い。 そっか、せつな、やっぱり……」 ラブには四つのハートを集めたクローバーの大きなチョコレート。 美希とブッキーにはそれぞれハート型の中くらいのチョコレート。 ブッキーのチョコには犬っぽい顔が描かれていた。 そして、美希のチョコには赤いトッピングが散りばめられて、 中心に青いスペードの意匠が刻まれていた。 ラブは、ドアの外でもたれかかって考えた。 全部は読めなかった。 でも多分あれは、あの言葉の意味は。 (あたしのチョコのメッセージカード、抜いておかなくちゃ) 「大は小をふくむ、な~んてね」 先に洗面所で顔を洗おう。 そう決めてフラフラと廊下を歩いた。 「今朝はずいぶん早くから頑張ったのね、せっちゃん」 「おはよう、せっちゃん」 「おはよ~おとうさん、おかあさん、せつなっ」 「おはよう、おとうさん、あかあさん、ラブ」 ほとんど三人同時に居間に入ってきた。 ラブはあれからは寝られなかったのかもしれない。 少し目が赤かった。 「あの、おとうさん。今日は遅くなるって聞いたから、 これ、いつもありがとう…………大好き」 真っ赤な顔でせつなは恐る恐るチョコを手渡した。 もらえるとは思っていたおとうさんも、それ以上に真っ赤だ。 躓いたり、どもったりしながらなんとか受け取った。 「えへへ~おとうさん、あたしからも」 せつなに触発されたのか、ラブも軽く抱きついてから渡した。 「あらあら、今日は良い日になったわね、お父さん。 これは残業も頑張らなくちゃね」 おかあさんも凄く嬉しそうだ。 「ラブにはこれ、持って行くにも大きいし、 …………大好きよ、ラブ」 「うん、あたしもだよ、せつな」 自作のチョコレートを交換してから、ラブがせつなを見つめる。 その目はとても愛しそうで、でもどこか寂しそうな憂いもあった。 「さっ、遅刻するわ、急ぎましょうラブ。 えっ!」 突然、手をぐっと引かれる。 ラブはせつなの首に両手をかけて強く抱きしめた。 ぎゅ~っと。 「どうしたの、ラブ。ちょっと苦しいわ」 「……………………っ、 なんでもないっ、行こっ、せつな!」 惜しむように離れた後にあったのは、いつもの笑顔満面のラブだった。 競-389へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/196.html
「おはよー、せつな!今日も1日よろしくね。」 「おはよう、ラブ。こちらこそよろしく。」 私がラブの家に住み始めてから、もう何十回目の朝を迎えたのだろうか。 朝のあいさつもよそよそしかった最初の頃に比べて、今ではごく普通に交わしている。 今日は中学校の行事である、職場体験学習の1日目だ。 「ラブ、ジャージ姿で登校なんて何か新鮮ね。」 「うん、せつなは何を着てもサマになるねぇ。」 「ありがと・・・って、ちょっとラブ!それって褒めてるの?からかってるの?」 「さあ、どっちかしらね~あはは!」 走って逃げていくラブを追っかけているうちに、学校に着いた。 朝のホームルームが終わり、学年全員が校庭に集まった。 私たちは同じ体験先ごとに数人ずつ連れ立って行った。 幼稚園に行くのは私とラブのほかに、他の2クラスからいずれも女子が2人ずつ。 「この子があたしのクラスに転入してきた、せつなだよ。」 「東せつなです。はじめまして。」 彼女ら4人は、ラブやクラスメイトが羨ましいと言っている。そんなに私って人気者なのかしら? 話をしながら歩くこと十数分、目的地の幼稚園に到着した。「クローバーようちえん」と書かれた看板が見える。 昨日ラブと一緒に見たアルバムの表紙と同じ名前だ。 「ねえ、ラブ。ここがラブが通ってた幼稚園なの?」 「うん、そうだよ。いやー、昔を思いだしてきたよ。」 私たち6人は職員室を訪れた。先生方にあいさつした後、中学のクラスごとに2人ずつに分かれた。 私とラブは年少組の担当だ。3人の中で最も若く見える女の先生が迎えてくれた。 「四つ葉中学から来ました桃園ラブです、よろしくお願いします!」 「同じく東せつなです。どうぞよろしくお願いします。」 「ラブさんに、せつなさんね。私はこの幼稚園の年少組の先生よ。よろしくね。」 「はい、先生。」 私たちは先生に連れられて、年少組の教室へ移動した。 しばらくすると、園児が1人、また1人と教室に入ってくる。 私たち2人に気付いたのか、大きな声であいさつしてきた子もいた。こちらもおはよう、とあいさつを返す。 「はい、全員そろいましたね。みなさん おはよー ございます!」 「せんせー おはよー ございます!」 先生も園児たちも、聞いたことのないイントネーションでゆっくりしゃべってる・・・どして? 「今日はね、みんなのお姉ちゃんたちが幼稚園に来てくれました。」 「ラブお姉ちゃんと、せつなお姉ちゃんです。それじゃ、自己紹介よろしくお願いします。」 「みなさん、おはようございます!桃園ラブです。」 「ラブって、ちょっと変わった名前だけど、あたしはこの名前が大好きだよ!みんなよろしくね。」 「おはようございます。東せつなです。」 「私は幼稚園に来たのは初めてですけど、みなさん仲良くしましょうね。」 「はい、よくできましたー。みんな拍手ー!」 私たちは園児たちから拍手の祝福を受けた。 ただあいさつしただけなのに何だか照れくさいわ・・・。 「さあ、みなさん。今日はお絵かきをします。」 「今回のテーマは『ぼくの・わたしの好きなヒーロー・ヒロイン』です。」 「みなさん、おうちからお手本となる物を持ってきましたか~?」 「は~い!」 園児たちが元気に答える。中にはヒーロー物の人形を高々と掲げる男の子もいた。 「それじゃみなさん、これから画用紙を配りますので、もらった人から描いて下さい。」 「ラブさん、せつなさん。画用紙を配るのお願いね。」 ラブと私は先生から画用紙をもらい、園児たちに1枚ずつ配っていった。 みんな「ありがとう」とお礼を言って受け取ってくれた。 入園して半年足らずでこんなにお行儀がいいなんてスゴイわ・・・。 「ラブさん、せつなさん、画用紙配りご苦労さま。よかったら、あなたたちも一緒に描いていかない?」 先生が私たちにも絵を描くように勧めてきた。 「あ、あたしはエンリョしときま・・・」 「ラブ、せっかくだから描いていきましょ。美術の自主制作だと思えばいいじゃない。」 「う、うん。ホントにせつなは真面目だなー。じゃあ、お願いします。」 先生から画用紙と色鉛筆を受け取り、お互い向き合って椅子に座った。 「せつなー、あたしたちお手本になる物を持ってないよー。一体何を描けばいいの?」 「ラブ、これがあるじゃないの。」 「あ、そっか!リンクルンの画像フォルダね。せつな、あったまイイー!」 「お世辞はいいから早く描く題材を決めて。描ける時間は少ないわ。」 リンクルンを開き、保存されている画像をチェックする。 テーマに一番見合った画像を決め、完成イメージを思い浮かべて色鉛筆を動かす。 ラブもどうやら描く絵を決めたようで、リンクルンと画用紙を交互に眺めながら絵を描き始めた。 「はーい、みなさん。絵は描けましたか~?」 先生の言葉と共に、描いた絵の発表タイムがやってきた。 「じゃあ、みなさんより先にラブお姉ちゃんとせつなお姉ちゃんの絵から見てもらいましょうね。」 「まずは、ラブお姉ちゃんからどうぞ~」 「わは~、自信は無いけど一生懸命描きました。それじゃ、見て下さい!」 ラブは教室の前方にあるホワイトボードの前に立ち、自分の描いた絵を全員に披露した。 少女漫画チックに描かれたその絵には、笑みを浮かべ両手でハートマークを作っている女の子の姿が。 描かれているのは・・・私? 「あら~、ラブお姉ちゃんはせつなお姉ちゃんを描いたのね。よく描けているわ。」 「てへへ、ありがとうございます。この笑顔のせつながあたしのヒロインです!」 (まあ、ラブったら・・・ありがとう、うれしいわ。) 「さあ、次はせつなお姉ちゃんの番よ。」 私は最前列へと移動する。 途中でラブとすれ違う際に軽くハイタッチし、ウィンクでエールをもらった。 「私も絵を描くのはあまり得意ではないのですが・・・みなさん、見て下さい。」 絵が描かれた画用紙を自分の胸の前に掲げる。 しばらくすると、「おおーっ」とか「すごーい」などの声が聞こえてきた。 「せつな、これあたしだよね?ダンスレッスンのシーンか~。」 「せつなさん、あなた上手だわ。今にも絵の中のラブさんが動き出しそうよ。」 「あ、ありがとうございます。ダンスをしているラブが一番輝いているから・・・。」 ラブが私のもとにやってきて、両手を前に出すように促す。 私も描いた絵を教卓に置いて、ラブに向かってそれぞれの手を差し出した。 ラブは右手、次いで左手で私の逆の手を握り、こう話し掛けてきた。 「せつな、あたしを描いてくれてありがとう。本当にありがと・・・。」 私に感謝の言葉を述べるラブ。その目は潤んでいるようだ。 「ううん、私にとってのヒロインはラブしかいないから・・・。」 「せつな・・・!」 「ラブ・・・。」 つないでいた手を離し、ラブが両腕を大きく横へ広げたその時だった。 「せつなさん、ごめんなさい!」 私は先生に突然左腕をつかまれ、脇へと逸らされてしまった。 敵の気配を感じる事が得意な私も、この時ばかりは無警戒だった。 私をつかみ損ねたラブが軽くよろける。 一瞬静まり返る教室。 「ラブおねえちゃん、かっこわるーい!」 「ホントだー、あははは!」 「せんせー、グッジョブ!」 園児たちからいくつもの言葉が発せられた後、教室は笑いの渦に包まれた。 一方、ラブは顔を赤くして呆然と立ち尽くしている。 「ラブ、いつまでそうやってるの?」 「だって、せつなぁ~。」 「ラブさん、ごめんなさいね。子供たちが見ている前で、あれより先は続けてほしくなかったの。」 「先生・・・。」 「あなたは少し恥ずかしい思いをしたでしょうけど、みんなの顔を見てごらんなさい。」 園児たちは先程の爆笑劇からか、皆楽しそうな顔をしている。 「ラブ、あなたいつも言っているでしょ。」 「・・・何、せつな?」 「みんなで幸せゲットだよ!って。まさに今がそうじゃない。」 「そうだね。そう思えば何だかやる気がわいてきたよ!」 「よかった。ラブが元気になって。」 「さあ、絵の発表タイムの続きよ。今度は子供たちの番ね。」 私とラブはそのまま教卓の両脇に用意された椅子に座り、園児たちが絵を見せに来るのに備えた。 子供たちにとってのヒーローやヒロインって誰なんだろう、と楽しみにしながら。 ~つづく~ 4-381へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/661.html
「もしもし、美希!今すぐウチに来て!いいから早く!」 「ブッキー!あたしんちにすぐ来て!寝たら承知しないよ!」 あたしはとにかく、この部屋で起こった現象をいち早く伝えたかった。 家にはお父さんもお母さんもいるけれど、この二人を選んだのには理由がある。 ◇ ◇ ◇ 「ラブ、どうしたの?こんな朝早くから!」 ジャージ姿の美希たんがあたしの部屋に入って来た。 朝のジョギングの途中だったらしく、汗で濡れた頬に髪が貼りついている。 「ふわぁ、おはよう、ラブちゃん。日曜日なのに・・・。」 続いて、ブッキーも部屋にやって来た。 その声と表情からして、とても眠たそうだ。 「ごめんね、美希たん。ブッキー。こんな時間に呼び出して。」 「それでラブ、一体何の用なの?」 「美希たん!こ、こ、これを・・・。」 おずおずと美希たんに1通の手紙を渡す。 「別に普通の手紙じゃない。どれどれ・・・。」 「桃園ラブ様・・・ラブ宛てね。で、差出人は・・・」 「東せつな・・・せつな!?せつなちゃんなの!?」 「だってせつなは今はラビリンスに・・・」 「あたしも初めは信じられなかったよ!でも・・・」 あたしは30分ほど前の出来事を話した。 ベッドで寝ていたら、聞き覚えのあるメロディが部屋に響いて。 そして部屋の鏡から眩しい光が発せられて、この手紙が残されていた事を。 「とにかく、その手紙を読みましょ。ラブ。」 「そうそう、せつなちゃんからの手紙だもんね。きっといいことが書いてあるよ!」 「う、うん。じゃあ開けるよ。」 封筒を丁寧に開き、中から手紙を取り出す。 ああ、確かにせつなの字だ。 早く読んでよ、と二人に促されてその手紙を読み上げた。 ――ラブへ お久しぶり。元気にしてた?私は元気よ。 ラビリンスに戻ってからは毎日忙しくて、ようやく落ち着いてきたから手紙を書いているの。 あ、手紙が届いた時、驚いたでしょう。 他の世界には、こうして手紙をテレポートで送っているの。 私も前に、ラビリンスから鏡を通じて手紙をもらった事があったわ。 そう、不幸のゲージを壊しに行った時・・・あの時はごめんなさいね。 今、私はラビリンスの子供たちに関する仕事をしているわ。 国中の学校や幼稚園、病院などを視察しているの。 時にはそこで授業や講演を行ったり、子供たちと遊んだりもしているのよ。 どの施設でも、帰る時にはみんなが笑顔になっているわ。 これもラブたちと一緒に過ごした経験が生きているのかしら。 ラブ、私がいなくてさみしくない? そんな事ないよね、お互いに頑張るって私と約束したんだから。 あなたにはお父さんやお母さんがいる。 美希やブッキー、由美や学校の友達だって。 ミユキさんやカオルちゃん、ほかにもあなたと関わりのある人は数多くいるわ。 だからこれからも、みんなの幸せのために頑張ってね。 私もラビリンスのために精一杯頑張るわ。 きっとラブたちにまた会える事を祈って・・・。 ラブ、みんなによろしくね。 せつな ◇ ◇ ◇ 「せつなちゃん・・・うっ、うっ・・・」 「泣かないでよブッキー。アタシまで泣きたくなるじゃない。」 「だってぇ、せつなちゃんがこんなに頑張っているなんて・・・。うれしいけど、それが見られないのが悲しくて・・・。」 「そりゃそうだけど・・・って、ラブも!?」 「せつな・・・せつな・・・うえええ~~~」 結局、美希たんも交えて三人で涙が止まるまで泣き合った。 手紙をしまおうと封筒を手にすると、まだ中身があるのに気付いた。 何だろうと軽く振ってみると、中から数枚の写真が飛び出してきた。 「あれ・・・?この写真、どこにもせつなが写ってない。」 「そんな訳ないでしょ。よく見ればいるはずよ。」 「・・・あーっ!もしかして、これがせつなちゃんなの?」 そこに写っていたのは、あたしたちがよく知る黒髪のせつなではなく、銀髪の少女――イースだった。 ただ、かつてラビリンスの幹部として悪さを働いていた頃の表情は全く無かった。 あるのは希望にあふれた輝く瞳、そして笑顔。 あたしたちは改めて1枚ずつ、写真を見始めた。 白い衣装を身にまとったせつながウエスター、サウラーと一緒に手を取り合っている写真。 スーツを着たせつなが演壇に立っている写真。 エプロン姿のせつなが子供たちと触れ合っている写真。 「せつなもずいぶん偉くなったものね・・・。」 「この調子なら、せつなちゃんの夢が実現する日も近そうね。」 「あたしたちも、せつなに負けずに頑張らなくちゃ!」 そのまま、写真を眺めながらあたしたちはおしゃべりに夢中になった。 しばらくすると、階下でお母さんの声がした。 「ラブー、美希ちゃんと祈里ちゃん来てるんでしょー。一緒に朝ごはん食べてってもらってー。」 「はーい!今行くからー。美希たん、ブッキー、行こっ!」 そうだ!お母さんやお父さんにもこの手紙と写真を見せなくちゃ。 どんな反応をするのか、ホントに楽しみだよ。